今回は、技能実習2号移行対象職種である「ダイカスト」を深堀りしていきます。
01 ダイカストってなんですか?
ダイカスト、またはダイキャストともよばれますが、いったいどんな作業なのでしょうか。
ダイカストは英語由来の言葉で、「Die Casting」のことです。
「Die」といっても嫌な意味の方ではなく、Dice(サイコロ)の単数形で、”四角いもの”をさします。
その四角いものの意味から、金属の型枠のようなものも「Die」とよぶようになったそうです。
「Cast」は鋳造のことですので、「Die Casting」で”金属の型枠をつかった鋳造”ということになります。
つまり、金型に流し込んで成形するダイカストは、名前がそのまま作業内容をあらわしていたのでした。
02 ダイカストの歴史
修学旅行でおなじみの奈良の大仏は「砂型鋳造」で作られました。
これは砂で造った型に鉄を流し込み、鉄が固まると砂型を壊す方法です。
古来よりおこなわれてきた砂型鋳造は、一回の鋳造ごとに型を壊すため同じものを作ることができませんでした。
19世紀、産業革命で様々なものが機械で大量生産されるようになり、鋳造もその波に乗りました。
繰り返し使える金型が発明され、同じ型から何度も鋳造品が成型されるようになったのです。
19世紀になり、さらに高速・高圧で注入するダイカストが発明されたことで、より強度の高い鋳造品が大量生産されるようになりました。
近代以降の工業発展に欠かせない技術であるダイカストを、「鋳造の産業革命」と称する向きもあります。
02 ダイカストの特徴
ダイカストはこれまであげた通り、金型鋳造の一種です。
材料には主にアルミニウム・亜鉛・銅・マグネシウムなどの合金が用いられ、これらの合金を溶かしたものを金型に高速・高圧で注入することで、高い精度と大量生産が実現できます。
02-01 ダイカストの製品例
ダイカスト製品は、8割から9割近くが自動車部品です。
大量に生産でき精度も高いという特徴から、自動車のエンジンやトランスミッションの部品などに用いられています。
それ以外でいいますと、
家電・・・・・冷蔵庫・洗濯機
事務用品・・・パソコン、プリンタ
おもちゃ・・・ミニカー、超合金ロボット
日用品・・・・カメラ、釣具(リールなど)
この他にもいろいろなものに活用されており、わたしたちの生活になくてはならないものとなっています。
02-02 鋳造・鍛造との違い
「熱した金属に圧力をかける製法」として混同されがちな鋳造、鍛造と比較して、違いをみてみましょう。
ダイカスト | 鋳造 | 鍛造 | |
成形方法 | 溶かした金属を高速、高圧で流し込み成型 | 溶かした金属を型に流し込み成型 | 熱した金属を直接叩く又は型に流し込み圧力をかけて成型 |
メリット | 大量生産が可能寸法精度が高い | 金型の構造が簡単で安価使用できる合金種が多い | 圧力をかけることにより高い強度を実現内部品質が安定 |
デメリット | 鍛造に比べ強度が低い金型が高価 | 複雑なものは不向き時間がかかる | 手間と時間がかかる |
03 移行対象職種「ダイカスト」
技能実習制度で受け入れ可能な職種は、ホットチャンバダイカスト作業とコールドチャンバダイカスト作業の2つです。
03-01 作業の定義
作業の定義は以下の通りです。
作業の定義
ホットチャンバダイカストマシン(注)を使用して行う鋳造作業をいう。
(注)射出部(加圧室)が溶湯の中にあるダイカストマシンで、その特徴は、
①主として亜鉛合金、マグネシウム合金などの鋳造に使用される。
②射出部が溶湯中にあるので注湯する必要がなく、鋳造サイクルが早い。
③鋳造圧力が低い(7MPa~25MPa)。
酸化物、空気の巻き込みが少ない。
作業の定義
コールドチャンバダイカストマシン(注)を使用して行う鋳造作業をいう。
(注)射出部(加圧室)が溶湯の中にないダイカストマシンで、その特徴は、
①大型マシンによる大物ダイカストが生産できる。
②サイクルごとにスリーブに注湯する。
③鋳造圧力を高くすることができる(20~120MPa程度)
03-02 必須作業
それぞれの必須作業は以下の通りです。
必須作業
ホットチャンバダイカスト作業
(1)ホットチャンバダイカスト作業
①ホットチャンバダイカスト加工作業
以下のうち1と2は必ず行い、他は必要に応じて行う
1、ホットチャンバダイカストマシン及び付属装置(溶解炉等)の操作
2、ダイカスト製品の簡単な寸法測定
3、金型の取付け取りはずし
(2)安全衛生業務
①雇入れ時等の安全衛生教育
②作業開始前の安全装置等の点検作業
③ダイカスト職種に必要な整理整頓作業
④ダイカスト用機械及び周囲の安全確認作業
⑤保護具の着用と服装の安全点検作業
⑥安全装置の使用等による安全作業
⑦労働衛生上の有害性を防止するための作業
⑧異常時の応急措置を修得するための作業
必須作業
コールドチャンバダイカスト作業
(1)コールドチャンバダイカスト作業
①コールドチャンバダイカスト加工作業
以下のうち1と2は必ず行い、他は必要に応じて行う
1、コールドチャンバダイカストマシン及び付属装置(溶解炉等)の操作
2、ダイカスト製品の簡単な寸法測定
3、金型の取付け取りはずし
(2)安全衛生業務
①雇入れ時等の安全衛生教育
②作業開始前の安全装置等の点検作業
③ダイカスト職種に必要な整理整頓作業
④ダイカスト用機械及び周囲の安全確認作業
⑤保護具の着用と服装の安全点検作業
⑥安全装置の使用等による安全作業
⑦労働衛生上の有害性を防止するための作業
⑧異常時の応急措置を修得するための作業
03-03 関連作業・周辺作業
関連業務、周辺業務は以下の通りです。
関連業務
①(ホット・コールドそれぞれの)ダイカストマシンの自動化装置の操作
②ダイカストマシンの自動化装置の操作
③合金溶解炉等の操作
④後加工(熱処理、表面処理、安定化処理等)作業
⑤検査(外観、寸法、材質、強度、非破壊、耐圧気密等)作業
⑥機械・器工具の管理作業
⑦金型の保守作業
⑧クレーンの運転作業(特別教育、技能講習等が必要。)
⑨玉掛け作業(特別教育、技能講習等が必要。)
⑩フォークリフトの運転作業(特別教育又は技能講習が必要。)
関連業務
①原材料の搬送作業(工場内)
②加工部品及び製品の組立て作業
③製品(部品)の梱包・出荷作業
04 まとめ
わたしたちの身の回りの様々なものがダイカストの技術でつくられています。
そしてダイカストは、日本のものづくりを支える大切な技術でもあります。
エヌ・ビー・シー協同組合には、ダイカストの作業で技能実習生を受け入れている企業さまが多くいらっしゃいます。
今後もそのノウハウを活かし、企業さま、組合員のみなさまに安心して受け入れをしていただけるよう、真摯にサポートしてまいります。